「あ」
「なんだよ、忘れ物か?もう成層圏だし、戻れねえぞ」
「違いますー。子供扱いしないでよね」
「じゃあなんだよ。まさか、宇宙にでも飛び出したいとか言うんじゃねえだろうな」
「もうっ!そんなんじゃないんだから!…確かに、飛び出したらどうなるんだろうなぁって気にはなるけど」
「おいおい……」
「ファラさん、止めて下さいよ。宇宙になんか生身で飛び出したら、死にますよ?」
「わ、分かってるわよ」
「で、なんなんです?」
「え?」
「さっきの『あ』って。何かに気づかれたんでしょう?」
「ああ……。あのね、今日って七夕だなぁって、今さっき思い出したの」
「七夕?」
「おいおい、七夕なら先月だろ?」
「旧暦だと今日が七夕なんだ。だからほんとの七夕ってだから今日なんだよ」
「へえ…」
「インフェリアには暦が二つもあるんですか。少し面倒ですね」
「で、それがどうかしたのか?」
「ん?だって、今の私たちみたいじゃない?」
『え?』
「空を駆けて、離れ離れになった人が出会うんだよ?白鷺じゃないけど、このバンエルティア号に乗って、ね」
「ああ……確かに似ていますねえ」
「そうかあ?似てないと思うっていうか、俺はそんなの嫌だけど」
「なんで?」
「だって」
一年に一度しか会えないなんて、そんなの耐えられねえじゃん。